2024/02/08〜2024/02/14

2024/02/08(木)

私信のようでいて、ボトルメールのような連絡をくれる友人がいる。フランスで滞在制作をしているという短い近況報告が送られてきた。過去と現在と未来が、『自分』を通して交差する、そのことで生まれる何か、それがとても楽しみです、という返信をした。パリは今頃お昼だろうか、そういうことを考えた。

 

2024/02/09(金)

家に生花があるととても良い。光に照らされてできる影のシルエットがかわいいことに朝起きて気がつく。もしかしてワイングラスってチューリップの隠喩なのかも、と半分寝ぼけた頭で考える。6:20、家を出る。日が登るのが早くなってきた。

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2024/02/10(土)

福尾匠さんの『日記 私家版』を少し前から読みなおしている。日記を書くことについての言及を読み、自分の日記の書き方について少し考える。書く前から書くことが決まっている状態というのはあんまり面白くないかも。頭のなかで推敲せずにもっと即興的に書くべきなのかもしれない。俯瞰って難しいなと思う。ある種の冷徹さで見つめること、何にも執着しないこと。おとといからすっかりパリの気分で、積んでいたヘミングウェイ『移動祝祭日』を読み始めた。

”自分が空っぽになると、自分の仕事を再び始めるまで、仕事のことを考えたり心配したりしないように、読書することが必要であった。自分の創作の井戸を決して涸らさないで、井戸の底に何かまだ残っているときにいつも止め、そこへ流れ込む泉から夜の間に補給させるようにすることを、私はすでに学んでいた。”

 

2024/02/11(日)

ドーナツを作った。ミスドハニーディップが好きで、あれを家でつくれたらとずっと画策していた。一次発酵、二次発酵を終えてもあまり膨らまず、大丈夫か...?と心配になったが、揚げてみたら案外それっぽくなったので良かった。生地をこねて形成する作業は「手首から先運動」(坂口恭平)そのものだったなと思う。

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夕方、街へ出る。久しぶりに100000tを覗く。ずっと読みたかったが高価で手が出なかった本を何冊か見つけてテンションが上がる。そのうちのひとつ、『文化のなかの野生』を購入。ルイジギッリ『写真講義』も見つけたが、古本とはいえ結構な値段で怯んでしまった。いつか、みすずの本を躊躇なく買えるようになるのだろうか。

MOVIXで『夜明けのすべて』を観る。どのシーンにも優しさがあり、あたたかいまなざしがある。『ケイコ』でもそうだったように、シーンの中に空間的な高低がはっきりあって面白い。街の遠景のショットでとにかく涙が出てくる。三宅唱監督作品をリアルタイムで観ることができること、その時間を、とにかく言祝ぎたい。そういう映画だった。

 

2024/02/12(月)

実家から送られてきた野菜でせっせと常備菜を仕込む。ついでに早めの昼ごはんを用意したら存外に豪華になってしまいお腹いっぱい。

f:id:analog_3:20240212212550j:image卵とトマトのナンプラー炒め、ウインナー、カリフラワーのおかかマヨ和え、かぼちゃの煮物、蓮根のきんぴら、キャロットラペ、玉ねぎとわかめとスナップエンドウの味噌汁、白米

 

食後ちょうど眠くなりかけたタイミングで買い物ついでに散歩に出る。川の音を聞きながら遠くの空を眺めると、昨日の映画の遠景のショットが思い出されていくらか泣きそうになる、というか泣いた。Hi'Specの音楽が素晴らしかったなと思い、『きみの鳥はうたえる』のサントラを聴いたら余計に泣けた。山添くんと藤沢さん、僕と佐知子と静雄。

f:id:analog_3:20240212213539j:image西日、反射

f:id:analog_3:20240212213641j:image樹皮が白くツルツル、なぜか舟越桂の彫像を思い出した

f:id:analog_3:20240212213837j:image黄色いボールガムみたいな実、何の木だろう

 

2024/02/13(火)

朝起きて悄然とした気持ちでいた。うっすらと死にたいような気がしてくる。仕事。一日中、全然ダメで、イライラする。気分が改善しないようで、立て直し方も思い付かない。全くもって良くない一日だった。疲れ、帰宅。すぐに寝た。

 

2024/02/14(水)

6:20に家を出て乗る通勤電車は乗客はたくさんいるのにいつもとても静かで、早朝から粛々と労働に向かう人しかいない。が、今日は大学生くらいの若い女性2人がおしゃべりしながら乗り込んでいた。キャリーケースを引いているので旅行者かもしれない。他の乗客をみて、「こんな時間に出勤とか、私なら秒で仕事辞めるわ(笑)」などと話している声が聞こえてきた。本当に悲しく、怒りの気持ちが湧いてくる。場所が場所なら殴られてもおかしくないんじゃないかと思ってしまった。あなたが秒で辞めたいと思うような働き方をしている人がたくさんいる、本人の意志に関わらずそうせざるを得ない人がいて、そういう人たちによって支えられている経済や社会が確かにある。